20. 加熱殺菌により、栄養素は失われますか?

缶詰、びん詰やレトルト食品は、果実などの酸性食品を除いて、ふつう110~120℃の高温で加熱殺菌されるので、生鮮食品や家庭で調理した食品に比べて、栄養価が劣ると考えられがちです。

しかし、缶詰は、大量に出回る時期(旬)の新鮮な原料を使って、高い真空下で空気をしゃ断した状態で加熱殺菌が行われるので、家庭で調理されたものより、むしろ栄養価が高いといえます。

まず、ビタミン類についてみると、一般的にA、D、Eは水に溶けないので、原料の調理(剥皮、切断、湯煮など)により、ほとんど損失することはなく、加熱殺菌に対して安定でこわれません。ビタミンB1、B2、Cは水にも溶けやすく、B1とCは比較的酸化されやすく、調理によってある程度減ったり、こわれたりします。加熱殺菌に対しては、B1はpHの高い魚、食肉、野菜などの場合、不安定でこわれやすく、B2は比較的安定しています。Cは缶詰のように空気に触れない状態で加熱された場合はかなり安定です。

なお、調理の工程で、湯煮はできるだけ短時間に行ったり、蒸気で蒸す方法に変えることによって、ビタミン類の減少を少なくする方法がとられています。

いま、野菜缶詰に例をとって、ビタミン類の残存量 注)についてみると、原料の種類、調理の方法、加熱殺菌の条件によって一概にはいえませんが、Aは80~100%、B1は20~50%、B2は60~90%、Cは50~80%とみてさしつかえありません。また、加熱殺菌により、たん白質、脂肪、糖質などの栄養素は、減少することはありません。

注) 缶詰はふつう液汁が加えられているので、液の中に含まれる水溶性のビタミン(B1、B2、C)を計算に入れた場合の残存率を示しました。