食品微生物学研究室 (第2研究室)

食品の安全性確保に不可欠な微生物に関する試験・研究を担当する研究室です。

主な研究業績

缶詰、びん詰、レトルト食品など密封容器詰食品の変敗微生物に関する試験・研究を行っています。
なかでも、変敗原因菌の分離、培養法、有芽胞細菌の耐熱性試験法や簡易同定法の研究、新製品開発における適正な加熱殺菌条件を設定するための試験研究を行い、次のような報告を行いました。

水産缶詰から分離された嫌気性有芽胞細菌の性状および耐熱性

第60回技術大会発表 2011年

市販加工食品のpHおよびAw測定調査

第60回技術大会発表 2011年

2000年から2008年までに缶詰およびレトルトパウチ詰食品から分離した Clostridium thermosaccharolyticum の耐熱性

第58回技術大会発表 2009年

2000年から2007年までに缶詰食品から分離した Clostridium thermosaccharolyticum の遺伝子解析による同定

第57回技術大会発表 2008年

ミカンシラップ漬け缶詰および果実加工品由来の有芽胞乳酸菌の遺伝子解析による同定

第56回技術大会発表 2007年

容器包装詰低酸性食品のボツリヌス菌に対する安全性評価のための接種試験用菌株の性状

第55回技術大会発表 2006年

レトルトパウチ食品から分離した Bacillus 属細菌の性状

第55回技術大会発表 2006年

耐熱性好酸性菌の芽胞形成用培地と耐熱性の検討

第54回技術大会発表 2005年

変敗した低酸性飲料缶詰から分離した Moorella thermoacetica の芽胞形成用培地の検討

第53回技術大会発表 2004年

玄米粥中におけるボツリヌス菌の発育に及ぼす加熱処理条件

第53回技術大会発表 2004年

低酸性飲料缶詰由来の好熱性偏性嫌気性有芽胞細菌の芽胞形成用培地

第52回技術大会発表 2003年

粥中におけるボツリヌス菌の発育挙動

第52回技術大会発表 2003年

簡易法により同定した Clostridium thermohydrosulfuricum のPCR法による同定

第51回技術大会発表 2002年

フィルターによる糖液および清涼飲料水中に懸濁した耐熱性細菌芽胞の除去

防菌防黴学会誌 2002年

食品業界におけるろ過フィルターによる除菌は、生ビールや非加熱ミネラルウォーターなど一部の製品を除くといまだ一般的なものではない。製薬業界で用いられている滅菌用グレードフィルターでは、その細かいろ過精度のため、清涼飲料水自体の必要な成分も除去されてしまう。従って、滅菌用グレードフィルターよりもろ過精度の粗いフィルターによって耐熱性細菌芽胞を除去できれば最終製品への加熱量が最小限に抑えられ、より良い品質の清涼飲料水が製造できることが予測される。そこで、清涼飲料水の製造におけるフィルターによる除菌技術の確立を目的として、各種水溶液中に懸濁した耐熱性細菌芽胞(Bacillus stearothermophilusB. coagulansB. subtilisAlicyclobacillus acidoterrestrisClostridium thermosaccharolyticum)の除去試験を行った。

高度精白加工米におけるボツリヌス菌の発育挙動に関する研究

旗影会 研究報告概要集 1999~2002年

米製品の中でタンパク質やミネラルを低く加工した高度精白米とその加工米(加熱処理により炊飯時の炊き崩れを改善した生米タイプ)は、腎臓病の食事療法に対応できるものである。この高度精白加工米の市場性を検討するため、食品衛生上問題となるボツリヌス菌の発育挙動を調べた。

1999年
パウチに高度精白加工米および脱酸素剤を投入後、AおよびB型ボツリヌス菌芽胞を接種し、所定の条件で加熱処理し、培養後、毒素産生の有無を調べた。
2000年
高度精白加工米に各種水溶液を加え米飯状態でのボツリヌス菌の発育の有無を調べた。
2001年
高度精白加工米に各種水溶液を加えた米飯中でのボツリヌス菌の発育に及ぼす加熱処理(80℃、20分、100℃、30分、110℃、30分)の影響を調べた。

卵黄リゾレシチンの耐熱性好気性有芽胞細菌に対する抗菌効果に関する研究

旗影会 研究報告概要集 1997、1998年

加熱殺菌により貯蔵性を付与している缶詰・レトルト食品は、その加熱処理を軽減することができればより良い品質の製品が製造できる。そこで、耐熱性好気性有芽胞に対し、調理食缶詰等で乳化剤として用いられている卵黄リゾレシチンの抗菌効果について検討した。

1997年
市販のシチュールウに卵黄リゾレシチンを0.5、1.0、3%になるように添加し、Bacillus stearothermophilusまたはB. coagulans芽胞を接種後、加熱処理(Fo値4分またはFo値10分相当)し、培養後、発育の有無により抗菌効果を調べた。
1998年
卵黄リゾレシチンを0.1~5%添加した培地に、B. lichenifrmisまたはB. subtilis芽胞を接種後、90~105℃で加熱処理し、培養後、発育の有無により抗菌効果を調べた。

市販果実類缶詰の生菌数

缶詰時報 1996年

果実類缶詰などpH4.0未満の酸性食品は通常70~90℃で加熱殺菌されている。この程度加熱殺菌では細菌芽胞のような耐熱性微生物は生き残るが、大部分の芽胞はpH4.0未満では発育しないので、商業的無菌性が保持できる。しかし、膨張型変敗を起こした製品の同一ロットの正常品の生菌数が、一般の市販品に比較して多いことを経験したことから、(1)市販品の生菌数を把握する、(2)生菌数の管理目標値設定データを得ることを目的に、市販果実類缶詰の生菌数を測定した。

密封包装米飯におけるAおよびB型ボツリヌス菌の毒素産生に及ぼすpHの影響と芽胞の耐熱性

日本食品微生物学会誌 1994年

容器詰米飯には加圧加熱殺菌した製品とクリーンルーム内で米飯を容器に充填し、脱酸素剤を入れた製品がある。後者には、ボツリヌス菌芽胞の殺滅を意図して定められた加熱殺菌が施されておらず、これに代わるボツリヌス菌からの安全性を確保する製造基準も設けられていない。そこで、米飯中でのボツリヌス菌の発育および毒素産生を調べた。また、米飯のpHがボツリヌス菌の毒素産生に及ぼす影響についても調べた。

要冷蔵食品のE型ボツリヌス食中毒防止に関する研究

旗影会 研究報告概要集 1993~1997年

商業的に生産販売される要冷蔵食品は、50~100℃の低温で調理加熱処理が施されるのでボツリヌス菌芽胞が生き残る恐れがある。とくに、3.3℃以上で発育するE型ボツリヌス菌は冷蔵下で優先的に発育する。したがって、新製品の開発時に調理加熱条件、貯蔵流通温度および品質保持期限を設定するに当たってのE型ボツリヌス菌について発育挙動の研究を行った。

1993年
E型ボツリヌス菌の発育可能最低温度、最低pHおよびAw値を培地中で調べた。
1994年
食品または貯蔵温度の違いが、E型ボツリヌス菌の発育および生成に及ぼす影響について調べた。
1995年
E型ボツリヌス菌芽胞の耐熱性に及ぼすpH影響を調べた。加熱処理後の培地のpHを5.0~7.0に調整し、培地中での発育の有無を調べた。
E型ボツリヌス菌芽胞の耐熱性に及ぼす培養温度の影響を調べた。加熱処理後の培養温度を5、10、20および30℃とし、発育の有無を調べた。
1996年
1997年
E型ボツリヌス菌芽胞の耐熱性をMPN End Point法により測定した。pH 6.0、6.5、7.0の培地中で培養温度20および30℃のときのD値およびz値を測定した。

コーンスープ缶詰の原材料および製造工程の耐熱性細菌芽胞による汚染

缶詰時報 1993年

前報「調理食品缶詰の原材料および製造工程の耐熱性細菌芽胞による汚染」と同様にコーンスープ缶詰について調べた。

調理食品缶詰の原材料および製造工程の耐熱性細菌芽胞による汚染

缶詰時報 1993年

品質の良い調理食缶詰を製造するには、軽度の殺菌加熱処理をすることが望ましい。微生物的安全性を犠牲にすることなく殺菌加熱処理を軽減するには、殺菌前の製品中の芽胞数が多くてはならない。そこで、ビーフカレー、ミートソースおよびデミグラスソース缶詰の原料および製造工程の細菌芽胞による汚染状況を調べた。対象の調理食缶詰で主な変敗原因であるBacillus subtilisB. licheniformisB. coagulansおよびB. stearothermophilusを検出するため中温性好気性細菌およびフラットサワー菌芽胞数を測定した。

缶詰食品の変敗原因有芽胞細菌の種と食品の種類との関係

日本食品工業学会誌 1985年

缶詰、びん詰、レトルト食品など容器詰食品の殺菌加熱処理を設定するとき、指標菌が決めてあれば便利である。すでにClostridium sporogenes PA3679株は、殺菌加熱処理の条件設定の指標菌として常用されているが、これは食中毒防止の観点からである。変敗防止という観点からすれば、より変敗にかかわる頻度の高い他種の有芽胞細菌も指標菌に含めるべきである。そこで、変敗缶詰から分離した有芽胞細菌の種と分離源となった食品の種類との関係を示し、それぞれの指標菌を把握することを試みた。

チルド食品と低温殺菌

食品と低温 1985年

チルド食品の殺菌について、これまで調査してきたチルド食品の保存条件、低温で発育する有芽胞細菌およびその耐熱性、必要な殺菌値などについて解説した。

研究室配置

食品微生物学培養室

室内の吸換気はヘパフィルターを通して行い、人員の出入りにはエアシャワー室を通るなど、室内の清浄性を保っています。細菌の分離や培養など、当研究室の主要作業はここで行います。

食品微生物学研究室

研究員の居室および菌数カウントなど一部の実験作業を行います。

食品微生物学準備室

微生物実験に不可欠な培地の調整を主に行います。

恒温室1

微生物培養試験用の恒温器(20℃以下)を設置してあります。

恒温室2

微生物培養試験用の恒温器(30℃以上)を設置してあります。

食品微生物学実験室

微生物培養液の毒素産生を調べるため、マウスを飼育する実験を行います。

主な著作物

食品の腐敗と微生物

藤井建夫 編著
(食品における微生物の挙動の缶詰・レトルト食品部門を担当)

(株)幸書房(2012)

微生物胞子 -制御と対策-

渡部一仁、土戸哲明、坂上吉一 編
(耐熱性試験と評価法および缶詰・レトルト食品の微生物胞子制御部門を担当)

(株)サイエンスフォーラム(2011)

新しいレトルト食品開発・製造ハンドブック

横山理雄、田中 要 編
(レトルト食品の加熱殺菌の指標菌部門を担当)

(株)サイエンスフォーラム(2007)

微生物汚染事例・現場検査法 Q&A集

宇田川俊一、駒木 勝、佐藤 順、南澤正敏 編
(缶詰・レトルト食品部門を担当)

(株)サイエンスフォーラム(2003)

高温嫌気性細菌の分類と同定

ソフト・ドリンク技術資料(2001)

HACCP対応 食品危害分析・モニタリングシステム

渡部悦男、森 光國、大熊廣一、後藤良蔵 編
(生物分析の芽胞細菌部門を担当)

(株)サイエンスフォーラム(1998)

食品中の微生物検査法 解説書

三瀬勝利、井上富士夫 編
(食品別微生物検査法の缶・びん詰およびレトルト食品部門を担当)

講談社サイエンティフィック(1996)

食品微生物学ハンドブック

好井久雄、金子安之、山口和夫 編著
(缶詰・レトルト食品中の微生物部門を担当)

技報堂出版(1995)

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