(缶詰時報'98年9月号掲載)

8月になっても関東から北は冷夏と長梅雨で、何年か前の天候不順と米騒動が想起されます。その上、カレーやポットへの毒物の混入事件など、いい話題が少ない夏。意気の上がらない日本の状態がさらに消沈するのではないかと心配しています。

昔の化学分析方法をみますと、問題のシアン化カリや亜ヒ酸塩をはじめとした微量で致死に至る薬品、例えば水銀や鉛などの金属塩や溶媒など、かなりの頻度で使用されています。その量も比較的多く、また高濃度が使われています。先人が当時として特異的であり鋭敏で、精度良く目的物を定性、定量できる薬品という観点からのみ採用したのでしょうが、毒性はあまり考慮されていません。今では同じ方法は採用しませんが、その薬品を別のものに変えてやることはあります。こうした薬品は今とは比べものにならないほど無頓着に購入、保管、使用し、廃棄していたものと思います。

機器分析が主体となった現在では、毒性の強い薬品はほとんど使いません。例え使ったとしても数十分のT程度の量と濃度ですみます。

当所にも問題の前記の薬品を含め強い毒性のある薬品は使わないのに持っておりました。毒性の強い薬品、長期間使われていないもの、今後使わないと予想される薬品は毎年少しずつ廃棄処理をしていましたが、先の引っ越しの際に一括廃棄しました。大変な数があり、廃棄処理費用もかさみましたが(薬品によっては購入費の3倍程度)、長年捨てられず、管理・保管への気遣いばかりの薬品が少なくなりほっとしています。

現在、ほとんどの薬品は1週間程度あれば納品されますので、毒性などが懸念される薬品はもちろん、定常的に使う薬品もできるだけ必要最少量を使うたびに購入し、在庫しないようにしています。個々の購入費は少し高いのですが、有効期限、保管・管理面や廃棄処理費用を考えると結果的に安いと思っております。

(研究所次長兼第一研究室長 鈴木 健次郎)


<'98年7月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. 旗影会助成事業「コーンの加工によるフレーバーの変化」
  2. レトルト食品のシングリングに関する研究
  3. オンライン情報検索
  4. データベースの実用化
  5. インターネットによる情報管理
依頼試験
 新規受付28件、前月より繰り越し21件、合計49件。うち完了23件、来月へ繰り越し26件
 主要項目:貯蔵試験、変色原因究明、結晶・沈殿物同定、異物検定、ヒスタミン測定、膨張原因究明、栄養成分分析、変敗原因究明、接種試験、無菌試験、熱伝達測定、密封性状試験、英文証明書作成、通関統計データの処理

その他

  1. 会員への技術サービス
  2. 品質管理主任技術者資格認定講習会
  3. HACCP主任技術者講習会
  4. チルド食品研究会関係
  5. 食品包装プロセス研究会関係
  6. 技術委員会安全確保対策ワーキンググループ関係
  7. FDA管理サービス業務
  8. 「GMPマニュアル」原稿作成
  9. 中国四国缶詰技術会総会「環境ホルモンとHACCP」講演
  10. 日本ベビーフード協議会理事会、総会
  11. 静岡県水産試験場研修会主催「水産加工品へのHACCP導入」講演
  12. 中部缶詰製造協議会技術委員会研修会
  13. スポアーセミナー「有芽胞細菌の現状」講演
  14. 食品製造の衛生管理技術普及講座「食品製造におけるHACCP導入について」講演

登録:1998/9/23
(c)1998, (社)日本缶詰びん詰レトルト食品協会 Japan Canners Association