(缶詰時報 2008年11月号掲載)

節は実りの秋です。昔はこの時期になると祖母の家で栗拾いをして、それを茹でて食べたものです。しかし、最近は中華街などに出かけると一年中天津甘栗を見かけるせいか、秋の味覚という感覚は薄れています。私たちが甘栗と呼んでいる栗は中国原産のシナグリ(支那栗)という品種で、私が昔拾っていたニホングリのように渋皮が実に密着しないので剥きやすいという特徴があるようです。天津甘栗といえば甘味の強さが印象的ですので、水飴などで味付をしていると思う方も多いのではないでしょうか。私も最近まで何か独自の製法で皮を剥かずに甘味を付けていると思っていました。しかし調べてみたところ、天津甘栗製造の際に水飴は使用されますが、これは鬼皮につやを与えて見た目を向上させる効果や割れにくくすることが目的で甘味付のためではありませんでした。甘味の強さは石焼き芋のように酵素の働きを利用したものでした。栗にはデンプン分解酵素のアミラーゼが含まれており、40〜70℃で高い活性を示すとされています。ですから70℃程度で長時間かけて加熱するとアミラーゼによってデンプンが分解されてマルトース、グルコース、オリゴ糖などが生成して甘くなるわけです。

品に含まれる酵素は石焼芋や天津甘栗の製造において、また果実の追熟や食肉の熟成など食品の品質を向上させるために有効に働きます。しかし酵素的褐変のように酵素がマイナスの要因となることもあります。酵素的褐変は果実などに含まれるポリフェノールオキシダーゼという酵素がポリフェノールや酸素と反応して褐色色素を生成するもので、例えばリンゴをカットして空気中に放置しておくと褐色化するのはこの反応によります。加工食品でこのような原料を使用すると最終製品に褐色の色調が残り商品価値を下げてしまいますので、蒸気や熱水によるブランチングを行い、熱で酵素を失活させています。このように酵素の作用には良い面と悪い面の両方がありますが、製品製造の際にはうまくコントロールして、良い面だけを利用して頂きたいと考えます。 

(食品化学研究室 山崎良行)


<2008年9月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. 麻竹析出物に関する研究

  2. 交流高電界処理による耐熱性細菌芽胞の挙動(会員企業との共同研究) 

  3. 変敗品から分離したC.thermosaccharolyticum の遺伝解析による同定および芽胞の耐熱性測定

  4. 連続式通電加熱の電流供給方法の違いが熱伝達に及ぼす影響

  5. インターネットによる情報管理

  6. データベースの実用化

依頼試験

 新規受付37件、前月より繰り越し20件、合計57件。うち完了33件、来月へ繰り越し24件。

主要項目:貯蔵試験、分析(ヘッドスペースガス、有機酸組成、陰イオン組成)、測定(油脂特数、揮発性塩基窒素)、異物検定、原因究明(変敗、変色、異臭、膨張)、官能評価、開缶調査、微生物接種試験、耐熱性測定、無菌試験、生菌数測定、容器試験(性能、密封)、かたさ測定、英文証明書作成、ホームページ管理、通関統計データ処理

その他

  1. 愛媛県缶詰協会主催技術研修会講師担当

  2. 基礎技術講習会開催・講師担当

  3. 殺菌講習会業務(第81回講師担当、第80回査定)

  4. ビスフェノールA溶出実態調査

  5. 研究会(食品包装プロセス情報誌発送、チルド食品情報原稿作成)

  6. FDA管理サービス関連業務

  7. 会員サービス他(技術相談、文献調査、見学応対、電話、電子メール回答)


Update 2008/11/17

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