(缶詰時報 2008年9月号掲載)

詰食品の最大の特長はいうまでもなく、常温環境下で長期保存が可能ということです。これを可能にしているのは、微生物や塵埃が侵入するおそれのない気密性を有する容器に食品を充填・密封し、ほぼ最終工程において加熱殺菌を施し、商業的無菌を確立しているためです。従いまして缶詰工場では熱源の確保が重要といえるわけです。なかでも蒸気は工業用熱源の代表格といっていいでしょう。燃料ガスや水道水のように配管を使って供給することができ、殺菌から原材料の調理・仕込みに至るまであらゆる加熱の用途に対応できます。

上のように、缶詰工場において欠くことのできない蒸気はボイラーによって発生させます。このため如何なる事態でもボイラーは万全の状態でなければなりません。当会研究所にも換算蒸発量500kg/hの貫流式ボイラーを所有しており、レトルト殺菌釜、低温殺菌機、二重釜など各種加熱処理装置の熱源に用いておりましたが、今年5月、寿命を迎え、一時殺菌関係の業務に支障が生じました。今現在は紆余曲折を経ながらも同等のボイラーを新規に入れ替え、毎年、夏以降に増加する加熱殺菌業務に対応できるようになりました。

研究所がここ福浦に移った際に導入したボイラーですので、10年ほどで寿命となったわけです。水処理や使用条件を完璧に保つとしても今日ではボイラーの制御に様々な電子基板を用い、これら保守部品の交換可能期間にも限度がありますので、そう長く使うことはできないのでしょう。第二次大戦前に製造された蒸気機関車が今なお日本各地で運行されているのを見ますと、同じボイラーを利用した機械でありながら何故、寿命がこうも違うのかと思ってしまいます。もっとも現在運行されている蒸気機関車は長年の勤めを果たし、本来ならば隠居の身でありますので、蒸気圧力を制限して運行しているようです。往年のスピード、躍動美はもはや伝説となってしまいました。

後に話を元に戻しましょう。缶詰工場におきましては蒸気、水、圧縮空気、燃料、冷蔵設備、電力等は必要不可欠なユーティリティーです。缶詰工場のユーティリティーに関する海外文献について、近日中に食品包装プロセス研究会情報誌にて紹介する予定です。どうぞご期待ください。

 

(食品工学研究室 五味雄一郎)


<2008年7月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. 果実類の有機酸組成および陰イオン組成等の分析

  2. 交流高電界加熱による耐熱性細菌芽胞の挙動(会員企業との共同研究) 

  3. 変敗品から分離したC.thermosaccharolyticum の遺伝解析による同定および芽胞の耐熱性測定

  4. 通電加熱の熱伝達シミュレーション

  5. インターネットによる情報管理

  6. データベースの実用化

依頼試験

 新規受付45件、前月より繰り越し20件、合計65件。うち完了45件、来月へ繰り越し20件。

主要項目:貯蔵試験、分析(ヘッドスペースガス、栄養成分)、ヒスタミン定量、油脂特数測定等、白色物同定、異物検定、原因究明(膨張、変敗)、開缶調査、微生物接種試験、耐熱性測定、細菌試験、菌株同定、芽胞数測定、容器性能試験、かたさ測定、FDA殺菌条件申告、英文証明書作成、FDA登録(工場、施設)、ホームページ管理、通関統計データ処理

その他

  1. 第115回品質管理講習会開催・講師担当

  2. 会員企業研修会講師担当

  3. 本会技術委員会出席

  4. 日本食品微生物学会30周年記念大会実効委員会出席

  5. ボイラー設置業務

  6. ビスフェノールA溶出実態調査委員会出席

  7. ヒートシールの国際標準の制定委員会出席

  8. チルド食品研究会情報原稿作成

  9. FDA管理サービス関連業務

  10. 会員サービス他(技術相談、文献調査、見学応対、電話、電子メール回答)


Update 2008/9/11

    >> 日本缶詰びん詰レトルト食品協会ホーム

  

Copyright (c) 2008, 日本缶詰びん詰レトルト食品協会 / Japan Canners Association, All rights reserved