(缶詰時報 2006年10月号掲載)

年の技術大会は、11月9・10日に新潟市のホテルオークラ新潟で開催されます。新潟で思い出されるのは少し前の話ですし新潟市での被害は少なかったのですが、平成16年10月23日に発生した中越地震です。私が特に印象に残っているのは、上越新幹線の脱線です。とき325号が走行中にそのすぐそばで地震が発生して、車輪が線路からはずれてしまい脱線してしまいました。しかし、転覆を免れたために死者も出ず、けが人もほとんどなかったと思います。

敗学の権威である畑村洋太郎氏は、この中越地震の脱線事故をJRでは(珍しく)過去の教訓が生かされ、被害が少なくてすんだ例に挙げています。といいますのはJR(正確に言えばJR東日本)では阪神淡路大震災で高架橋が多数倒れてしまった例を参考にして、もしも新幹線の高架橋が倒れたら、甚大な被害が発生するということで、強度の基準を変えて、大地震があっても壊れないように、高架橋を鉄板で巻いてコンクリートを流し込んで補強工事をしました。すべての高架橋をすぐに補強するのは無理なので、最初に活断層が近いような危険なところから、補強工事をはじめました。そうしたら、危険と想定して補強した高架橋の近くで中越地震が起きたわけです。

そのため、高架橋が壊れないで済み、新幹線は脱線しただけで転覆しなかったので、大惨事を防ぐことができました。転覆しなかったのは直線コースだったなどの幸運も重なりましたが、転覆しなかったとしても高架橋が壊れていたら、ひどいことになったはずです。

り返しのつかない死者が発生したり、大がかりな回収、修理が必要になるような失敗が毎日のようにニュースになっています。もしかしたら、ある失敗を防ぐことが可能になっても、予想もしていなかった新しい失敗が発生して、失敗というものはなくならないものかもしれません。また、一度防ぐことができるようになった失敗でも、しばらく失敗がないと、忘れてしまって、再び同じ失敗が繰り返されてしまうのかもしれません。しかし、予測不能な失敗を完全になくすことは不可能だとしても、少なくとも、過去にあった失敗は、忘れないで繰り返さないようにしなければなりません。

にして、過去の技術大会では、大きな失敗はないと思います。しかし、多くの人が忘れてしまうような小さな失敗はまだあると思います。技術大会に限らず、過去の失敗を思いだして、小さな失敗もなくすように努力すれば、大きな失敗は未然に防がれると思います。

 

(食品工学研究室 戸塚英夫)


<2006年8月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. アスタキサンチンに関する研究

  2. 酢酸エチル生成に関する研究

  3. バチルス属細菌の耐熱性測定

  4. 食品の回転殺菌における熱伝達

  5. オーミック加熱による連続流動殺菌

  6. オンライン情報検索

  7. インターネットによる情報管理

  8. データベースの実用化

依頼試験

 新規受付31件、前月より繰り越し39件、合計70件。うち完了41件、中止1件、来月へ繰り越し28件。

主要項目:貯蔵試験、分析(栄養成分、ヘッドスペースガス)、品質評価、異物検定、原因究明(膨張、腐食)、微生物接種試験、菌株同定、変敗原因究明、耐熱性測定、耐熱性芽胞数の測定、容器性能試験、シーリングコンパウンド量測定、FDA施設登録、殺菌条件申告、英文証明書作成、ホームページ管理、通関統計データ処理

その他

  1. クレームと原因究明に関するワークショップ(9/27〜29)関係業務

  2. 分析展視察および新技術説明会出席

  3. 山形県缶詰協会主催新技術普及会講師担当

  4. 日本食品工学会年次大会聴講

  5. 研究会(チルド・食品包装プロセス)事務手続きおよび情報誌原稿作成

  6. FDA管理サービス関連業務

  7. 殺菌管理主任技術者講習会関連業務

  8. 産業廃棄物処理

  9. 会員サービス他(技術指導、文献調査、見学、電話、電子メール回答)


登録:2006/10/12
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