(缶詰時報 2001年 8月号掲載)


 食品業界に身を置く者にとって食中毒にかかるなどもっての他,ましてや食品微生物が専門ともなれば,自ら毒キノコを食し,その症状を体験したことのあるキノコの専門家ならいざ知らず,洒落にもなりません。とはいうものの,冬に生カキで2度ほどSRSV(本人はそう信じています)による食中毒を経験したことはあります。

 さて,関東地方は暑い夏の到来のようです。一段と食生活に気をつけなければならない季節となりました。少々刺激的な話ですが,丁度3年前に発生しました毒入りカレー事件,夏祭りの会場で出されたカレーが原因とされたこの事件,カレーで食中毒?,食してすぐに嘔吐がなぜ食中毒?,とそのニュースを知り,"あれ"と疑問をもたれた方も多かったのではないでしょうか。

マスコミからの情報を正しいこととして一方的に受け入れざるを得ない我々大衆は疑問を挟む余地すらにようです。

 

しかし,この小さな疑問に当時中学3年の女子生徒が夏休みの理科の宿題に取り上げ,一冊の本になりました。当時から話題になっていましたが,最近,文庫本になり手にすることができました。

本のタイトルは"四人はなぜ死んだか"(インターネットで追跡する「毒入りカレー事件」)三好万季著です。この事件は当初,黄色ブドウ球菌による集団食中毒とされましたが,その後青酸中毒になり,最終的には砒素中毒に落ち着いた形となりました。もし,中毒物質の特定が速やかに行われていれば尊い命は失われずにすんだのではと思います。

皮肉にも昨年の加工乳の食中毒ではこの管轄の保健所がいち早く原因となった黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンの遺伝子を検索したようです。

是非ご一読下さい。現在の情報社会にあって,結局,わが身はわが身で守るしかないのかなという意を強くしました。

 

(研究所次長・第2研究室室長 駒木勝)


<2001年6月の主な業務>

試験・研究・調査

  1. 密封容器詰食品の誘導電流および通電加熱による加熱殺菌技術の開発
  2. みかん缶詰の恒温放置中における菌数変化 
  3. 高度精白米におけるボツリヌス菌の発育挙動に関する研究 
  4. 果実缶詰等クレーム対応と品質向上に関する研究 
  5. インターネットによる情報管理

依頼試験

新規受付26件、前月より繰り越し16件、合計42件、うち完了26件、来月へ繰り越し16件。
主要項目;缶詰食品の貯蔵試験、原因究明(容器腐食)、異物検定、栄養成分分析、水分活性、変敗原因究明、細菌接種試験、菌株同定、カビ同定、菌株分与、証明書作成、容器圧縮強度試験、殺菌試験、FDA登録関連業務、通関統計データ処理

その他

  1. チルド食品・食品包装プロセス研究会業務(情報誌作成、事務業務)
  2. 主任技術者講習会(HACCP:講師担当) 
  3. 講演会聴講(日本シミュレーション学会、国際包装セミナー)
  4. 会議(食品産業センター情報活動事業、新版製造講義編集)
  5. 新版製造講義原稿執筆
  6. 研究報告発送 
  7. 会員サービス(来訪対応、電話、電子メール回答など)

登録:2001/8/15
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